最近の情報漏洩やサイバー攻撃について

🛡️
情報を守ることは、暮らしを守ること。
介護・看護の現場にとって、サイバーセキュリティはパソコンだけの問題ではありません。利用者さんのプライバシーと、日々のケアを続けられる体制を守るための、大切な備えです。
更新日:2026/10/23

最近の動きから、何を考えるべきか

企業や組織への不正アクセス、個人情報の流出、システムの停止。こうした問題は、大企業だけの話ではありません。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、2026年10月9日の注意喚起で、国内の金融機関や通信事業者などで情報漏えい事案の公表が相次いでいるとして、利用サービスやアカウント、保有データの点検を呼びかけています。重要なのは、ニュースを見て不安になるだけでなく、自分たちの情報の扱い方を見直すことです。[1]
本記事では、特定の企業の被害原因を推測するのではなく、公的機関の情報をもとに、介護・看護に関わる私たちが大切にしたい視点を整理します。

情報漏えいとサイバー攻撃は、同じではありません

情報漏えいとは、本来見ることができない人に情報が渡ったり、公開されたりすることです。一方、サイバー攻撃は、不正アクセスなどによってシステムや情報に被害を与える行為を指します。
攻撃によって情報が漏れることもありますが、メールの誤送信、書類の置き忘れ、共有設定の間違いなど、日常の業務から漏えいにつながることもあります。反対に、情報の流出が確認されなくても、攻撃でシステムが止まれば、業務には大きな影響が生じます。
つまり、備えるべきなのは、「情報を外に出さないこと」と「必要なときに情報を使えること」の両方です。

最近の脅威を、身近な言葉で理解する

IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として、1位に「ランサム攻撃による被害」、2位に「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」、3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が挙げられています。なお、これは主に2025年の事故・攻撃の状況をもとに選ばれたもので、2026年の被害件数の順位ではありません。[2]

データを使えなくする・盗んで脅す

ランサム攻撃とは、データを暗号化して使えなくしたり、盗んだ情報の公開を持ちかけて脅したりして、金銭などを要求する攻撃です。記録が開けなくなるだけでなく、個人情報の流出にも備える必要があります。[3]

自社の外側から影響が及ぶ

サプライチェーンとは、取引先や委託先を含む事業上のつながりのことです。自社の端末だけを守っていても、利用しているサービスや委託先が被害を受ければ、影響が及ぶ可能性があります。サービス提供者と利用者の間で、管理範囲や緊急時の連絡方法を確認することが重要です。[1]

便利なAIにも、情報を渡す前の確認が必要

AIは、文章作成や情報整理に役立つ一方、入力する情報や利用方法に注意が必要です。氏名を消しただけでも、住所、病歴、家族構成などの組み合わせから、誰の情報か分かる場合があります。
業務で使う際には、「利用が認められたサービスか」「その情報を入力してよいか」「保存や学習利用などの条件はどうなっているか」を確認し、出力も人が確かめることが基本になります。

介護・看護では、情報の先に暮らしがあります

介護や看護の記録には、住所や連絡先だけでなく、健康状態、生活上の困りごと、ご家族との関係など、その方の人生に深く関わる情報が含まれます。
それらを守ることは、単に規則を守るためではありません。「安心して相談できる」「自分のことを大切に扱ってもらえる」という信頼を守るためです。
また、訪問予定やケアの記録が確認できなくなれば、連絡や支援の調整が難しくなることも考えられます。セキュリティは、情報管理と同時に、サービスの継続を支える課題でもあります。

対策は、特別な機器よりも基本の積み重ねから

大切なのは、一つの製品を入れて安心することではなく、技術・運用・人の行動を組み合わせることです。以下は、事業者が点検したい基本事項です。当社での実施状況を示す一覧ではありません。
点検すること具体的な視点
ログインを守るパスワードを使い回さず、多要素認証を利用する。多要素認証とは、パスワードに加え、認証アプリなど別の要素でも本人確認する仕組み。
更新を続けるパソコン、スマートフォン、通信機器、ソフトウェアの修正プログラムを適用する。
共有範囲を絞る業務に必要な人だけが閲覧・編集できるようにし、退職者や使っていないアカウントを見直す。
持つ情報を見直す法令や業務上必要な保存期間を守りつつ、不要な複製や持ち出しを減らす。
異変に気づけるようにする不審なログインや、見覚えのないアカウントを確認できる体制を整える。
止まった場合に備えるバックアップだけでなく、実際に復元できるか、代替手段で業務を続けられるかを確かめる。
IPAは、認証・権限・ログ・保有データなどの見直しを求めています。また、厚生労働省の令和8年度版「医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」も、更新、権限管理、バックアップ、復旧手順、事業継続計画などを確認項目としています。後者は医療機関・薬局向けの資料であり、すべての介護事業所に同一の義務があるという意味ではありませんが、備えを考えるうえで参考になります。[1][4]

「防ぐ」だけでなく、「止まっても支える」備えを

どれほど対策をしても、被害や障害の可能性をゼロにすることはできません。だからこそ、普段使っているシステムが使えなくなったときの備えが必要です。
  • 訪問予定や緊急連絡先を、どの方法で確認するか。
  • 特に支援を途切れさせられない方を、どう把握するか。
  • 一時的に紙で残した記録を、どう保管し、復旧後に戻すか。
  • 誰に連絡し、誰がサービス提供者や専門家と対応を進めるか。
こうした準備が、BCP(事業継続計画)の一部になります。紙の控えや予備の連絡先も個人情報であるため、保管場所や閲覧できる人を決めておくことが大切です。
また、ミスや異変に気づいたときに、責められることを恐れて報告が遅れる状態は避けたいものです。早く相談できる関係と、迷わず動ける手順をセットで整えることが、被害を小さくする備えになります。

ご利用者さん・ご家族にも知っていただきたいこと

事業者や職員を名乗る連絡であっても、急な送金、パスワード、認証コードなどを求められたときは、その場で応じず、一度立ち止まってください。
不安な連絡があった場合は、メールやSMSに書かれたリンク・電話番号だけを頼りにせず、契約書や普段の連絡帳など、以前から分かっている窓口に確認する方法が役立ちます。

おわりに|便利さと安心を、両立させるために

私たちやさしい手諏訪は、テクノロジーを活用する目的を、単なる効率化ではなく、利用者さんと向き合う時間を増やすことに置いています。
その便利さを支えるのが、情報を大切に扱う姿勢です。現場に必要な情報を届けることと、誰にでも情報を開くことは違います。必要な人に、必要な範囲で、安全に届くことが大切だと考えます。
情報を守ること。支援を途切れさせないこと。そして、困ったときに相談できること。
これらを切り離さずに考えることが、利用者さんとご家族の安心につながります。

参考資料

  • IPA[不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について](https://www.ipa.go.jp/security/security-alert/2026/alert20261009.html)(2026年10月9日公開)
  • IPA[情報セキュリティ10大脅威 2026](https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html)・[解説書〈組織編〉](https://www.ipa.go.jp/security/10threats/omgdg50000008fi8-att/kaisetsu_2026_soshiki.pdf)
  • 厚生労働省[医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和8年度版)](https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716185.pdf)
本記事は、更新日時点で確認できた公的資料をもとに、一般の方向けに整理したものです。個別のシステムや事業所に必要な対策は、取り扱う情報や利用環境に応じて異なります。
3省2ガイドラインの概要|介護・訪問看護で押さえたいこと2026/10/5 9:582026/10/5 9:58

ライブプレビュー中

Notion の最新の内容を表示しています。