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身体拘束の適正化(身体拘束ゼロ)研修資料(介護保険・必須研修)
本資料の使い方(30〜60分)
- 目的:「身体拘束をしないケア」を原則として、現場で迷ったときの判断軸と手順を統一します。
- 対象:介護・看護・相談員・ケアマネ・管理者・委員会メンバー(委託職員含む)
- 進め方:前半は知識、後半は事例検討(グループ)+ミニテスト。
1. 研修のゴール
- 身体拘束(身体的拘束だけでなく、言葉・薬・環境による拘束を含む)を説明できる。
- 「なぜいけないか」を、ご利用者様の尊厳・安全・QOLの観点で説明できる。
- やむを得ず検討が必要な場面で、代替策の検討 → 例外要件の確認 → 記録・同意・期限管理までの流れをチームで実行できる。
- 日常の関わりの中で起きやすい「スピーチロック」を自覚し、言い換え・関わり方を実践できる。
2. 身体拘束とは(定義)
身体拘束とは、本人の意思に反して、行動の自由を制限する行為です。
- フィジカルロック(身体的拘束)
- 例:ベッド柵で囲う、ミトン手袋、車いすのY字ベルト、立ち上がれない椅子、離床センサーを「止める目的」で使う等
- ドラッグロック(薬による拘束)
- 例:不穏を理由に鎮静目的で漫然と向精神薬を増量し、活動性を不必要に落とす等
- スピーチロック(言葉による拘束)
- 例:「動かないで」「勝手に行かないで」「危ないからダメ」「今は無理」など、本人の行動・意欲を萎縮させる関わり
ポイント
スピーチロックは、悪意がなくても起きやすく、誰でも加害者になり得ます。
3. なぜ身体拘束がいけないのか(現場で説明できる言葉)
- 尊厳の侵害:本人の意思・自己決定を奪います。
- 身体的な悪影響:筋力低下、褥瘡、拘縮、転倒リスク増、誤嚥・窒息、血栓等
- 精神的な悪影響:不安・怒り・抑うつ、せん妄、認知症症状の悪化
- 関係性の悪化:信頼が損なわれ、ケアの協力が得られにくくなります。
- 事故・訴訟リスク:拘束具による外傷、事故の誘発、説明・同意・記録不足によるリスク
4. 原則と例外(基本方針)
- 原則:身体拘束は行わない(ゼロを目指す)
- 例外:緊急やむを得ない場合のみ、最小限・最短時間で実施検討
※自治体・監査で求められる標準的な枠組みとして、次の3要件を同時に満たすかを確認します。
- 切迫性:本人または他者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性:他に代替するケア方法がない
- 一時性:一時的なものであり、最短時間に限る
判断の合言葉
- 「今この瞬間、命に関わるか」
- 「他の方法をやり尽くしたか」
- 「いつ解除するか(期限)が決まっているか」
5. 代替策(拘束を使わないための引き出し)
状況別に、まず代替策をチームで検討します。
- 痛み・尿意・便意・不安・眠れない等、離床の理由を見立てる
- 環境調整:床面の安全確保、照明、動線、手すり位置、ナースコール配置
- 適切な見守り:巡視頻度、席替え、声かけの質
- 福祉用具の適正:歩行器、靴、杖、ベッド高さ、マット
- 生活リズム:日中活動、夕方以降の刺激、睡眠衛生
- まず原因:痛み、違和感、せん妄、不安、認知症症状、説明不足
- 固定方法の見直し(医師・看護師と連携):皮膚保護、テープ種類、位置
- 触ってしまう行動の代替:タオル握り、手遊び、安心できる物
- 声かけ:短い言葉、肯定形、選択肢提示
- せん妄評価、疼痛、便秘、脱水、感染、睡眠不足、環境刺激の確認
- まず安全確保(距離・導線・応援要請)
- 刺激を減らす、関わる人数を絞る、落ち着ける場所へ誘導
- 薬物は「治療」目的で必要最小限(医師判断)
6. 「スピーチロック」具体例と言い換え
- 「動かないで!」
- → 「今は危ないので、こちらで一緒に立ちましょう」
- 「勝手に行かないで」
- → 「行きたい場所はどこですか。まず一緒に確認しましょう」
- 「ダメ」
- → 「今は安全のために、こうしましょう」
- 「ちょっと待って」
- → 「今から〇分で戻ります。ここで座って待てますか」
- 否定形より、依頼形・提案形
- 命令ではなく、選択肢を出す
- 本人の気持ちの推測ではなく、確認する(「今、何が一番困っていますか」)
7. もし「身体拘束を検討せざるを得ない」と感じたときの手順
- まず応援要請(一人で抱えない)
- 切迫性の確認(命に関わるか)
- 代替策の検討(環境・ケア・見守り・医療連携)
- 3要件(切迫性・非代替性・一時性)の確認
- チーム決定(管理者/委員会/医師等、事業所ルールに従う)
- 本人・家族への説明と同意(目的、方法、時間、解除条件)
- 記録(開始時刻、理由、代替策、観察、評価、解除時刻)
- 最短で解除(評価し続ける)
- 振り返り(再発防止、ケア計画の更新)
監査で見られるポイント(よく指摘される所)
- 代替策の検討が記録に残っていない
- 解除条件・期限が曖昧
- 本人・家族への説明が不十分
- 「慣例」で漫然と継続している
8. 事例検討(グループワーク用)
ケース1:夜間の離床が多く転倒歴あり
- 何が起きている?(理由の仮説)
- 代替策を5つ出す
- それでも危険が高い場合、3要件は満たす?
- 解除条件・評価方法は?
ケース2:点滴を抜いてしまう
- せん妄・痛み・不安の確認ポイント
- 環境・固定・関わり方の代替策
- ドラッグロックにならない工夫
ケース3:スピーチロックになりやすい場面
- 自分の口癖を書き出す
- 言い換えを3パターン作る
9. ミニテスト(配布・回収用)
- スリーロック(3つの拘束)を答えてください。
- 緊急やむを得ない場合の3要件を答えてください。
- 「動かないで」はなぜスピーチロックになり得ますか。
- 拘束を検討する前に、チームとして必ず行うことを2つ挙げてください。
10. 研修記録(テンプレ)
- 実施日:
- 実施方法:集合 / オンライン / 動画視聴 / 個別
- 研修名:身体拘束・虐待対策研修
- テーマ:
- 参加者:
- 研修内容(要点):
- 事例検討の結論(代替策/再発防止策):
- 参加者の気づき(感想):
- 管理者確認:
付録:研修担当者メモ(運用のコツ)
- 「禁止の研修」にならないよう、安全と尊厳の両立を扱う。
- 事故防止の焦りから言葉が強くなる場面があるため、スピーチロックを丁寧に扱う。
- 個別研修(動画視聴)の場合でも、ミニテスト+振り返り一言を必ず回収し、証跡化する。