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家族向けリスク説明書 7種(薬物・車いすベルト・施錠・4点柵・体幹抑制・つなぎ服・ミトン)
使い方
- 該当する項目だけを印刷して渡す。最初に「0. 全項目共通の説明」を必ず添える
- この書面の目的は、署名をもらうことではなく、「説明したこと」と「家族の意見」を残すこと
- 記入欄は最後にまとめてある(7項目共通)
この7つは、すべて身体拘束等に該当しうる行為です
- 原則は行わない。行うのは緊急やむを得ない3要件(切迫性・非代替性・一時性)を満たす場合のみ、最小限・最短時間
- 家族の同意があっても、身体拘束が認められるわけではない。同意の有無で実施の可否が決まるものでもない
- 同意しないことで、利用者や家族が不利益を受けることはない
- 説明は「了承を得る」ためではなく、一緒に解除を考えるために行う
0. 全項目共通の説明(最初に読む)
身体拘束等とは
本人の意思に反して、行動の自由を制限する行為です。この書面に載っている行為は、すべてこれに該当しうると考えています。
なぜ行わないのか
拘束は、筋力低下・拘縮・褥瘡・誤嚥・転倒の増加など、かえって危険を増やすことがあります。不安や怒り、認知症症状の悪化、あきらめにもつながります。何より、本人の尊厳を損ないます。
やむを得ず行う場合の条件
- 切迫性:命や身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性:他に方法がない
- 一時性:一時的で、最短時間に限る
この3つを満たし、方法・時間・解除の条件を決めて記録し、委員会と管理者が定期的に見直すことを条件に、最小限で行います。
家族にお願いしたいこと
- 状態の変化(夜間の様子、食事、排泄、痛み、気持ち)を教えてください
- 「これはよくないのでは」と感じたら、いつでも言ってください。言ったことで不利益はありません
- 見直しの話し合いに参加してください
説明と記録について
説明した内容、家族の意見、今後の見直し予定は、ケア記録と身体拘束記録に残します。記録は本人を守るため、また解除を進めるために使います。
1. 向精神薬(動きを止める目的での使用)
該当する項目
11項目の10:行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
何を説明するか
落ち着かない、動いてしまう、眠ってほしいといった理由で、鎮静を目的に薬を追加・増量することを検討する場合があります。
※病気の治療に必要な薬はこれに当たりません。ここで説明するのは「動きを止める・静かにさせる」目的の使用です。
実施する目的(例)
- 強い不穏・興奮で、本人や周りの人がけがをする危険がある
- 夜間の転倒リスクが高く、他の方法では防げない
実施しない場合のリスク
- 興奮が続き、本人・家族・職員がけがをする
- 転倒・転落、チューブ抜去
- 睡眠不足が続き、状態がさらに悪化する
実施することで生じるリスク
- 過鎮静(ぼんやりする、反応が鈍い)、意識レベルの低下
- ふらつき・転倒の増加、誤嚥・窒息、呼吸抑制、血圧低下
- 脱水、食欲低下、便秘
- せん妄・認知症症状の悪化、認知機能の低下
- 手足のふるえ、こわばり、動きにくさ(錐体外路症状)
- 入院が長引く、飲み続けることになる
先に検討する代替策
- 痛み・便秘・尿閉・脱水・発熱・感染・睡眠不足を探して取り除く
- 部屋の明るさ・音・人の出入りを減らす、関わる人数を絞る
- 日中に活動する時間をつくる、夕方以降の刺激を減らす
- 主治医と「何のために出すのか」「何が良くなったら減らすか」を確認する
実施する場合の条件
- 医師の判断と処方によること
- 「何が改善したら減らすか」を決めておくこと
- 服薬後の様子(意識・ふらつき・食事・排泄)を観察して記録すること
- 定期的に必要性を見直すこと
家族にお願いしたいこと
薬が始まった後の様子(ぼんやりしていないか、転びやすくなっていないか、食事がとれているか)を教えてください。
2. 車いす固定ベルト(Y字型拘束帯・腰ベルト)
該当する項目
11項目の6:車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
何を説明するか
車いすからずり落ちる、急に立ち上がることを防ぐために、体をベルトで固定することを検討する場合があります。
実施する目的(例)
- ずり落ちや立ち上がりで転倒し、頭を打つ危険がある
- 麻痺や体幹の不安定さで、自分では座っていられない
実施しない場合のリスク
- 車いすからの転落、頭部打撲、骨折
- 立ち上がっての転倒
- 食事中に姿勢が崩れての誤嚥
実施することで生じるリスク
- 腹部・胸部の圧迫による息苦しさ、食欲低下、便秘
- 皮膚の圧迫、褥瘡、発赤
- 自分で外せず、転倒時に本人もろとも倒れる、ベルトが締まってけがをする
- すり抜けての転落、長時間座位によるお尻の除圧不良
- 締めつけへの不安・怒り・興奮
- 姿勢が崩れたままの食事での誤嚥
先に検討する代替策
- 車いす・クッションの適合(座面の高さ、奥行き、背もたれ、フットサポート)
- テーブルではなく、姿勢を支えるクッションやベルトの位置の見直し
- 離席時の見守り、声かけ、体位変換の時間調整
- リハビリ専門職によるシーティングの評価
実施する場合の条件
- 本人が自分で外せない状態で使う場合は、特に短時間とし、頻回に確認する
- 皮膚(脇、腹部、骨盤部)の観察を毎回行う
- 座位保持が安定したら外す。外す条件を決めておく
家族にお願いしたいこと
締めつけの跡、皮膚の赤み、息苦しさ、食事の様子で気づいたことを教えてください。
3. 部屋への鍵施錠(隔離)
該当する項目
11項目の11:自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
何を説明するか
本人が自分で開けられない状態で部屋に鍵をかけることを検討する場合があります。在宅では、家族が不在時に施錠している場合も含みます。
実施する目的(例)
- 一人で外に出て行方不明になる、道路に出る危険がある
- 夜間に外へ出ての転倒・事故が繰り返されている
実施しない場合のリスク
- 行方不明、交通事故、夜間の転倒・凍死・熱中症
- ご近所とのトラブル
- 家族が眠れず、介護が続けられなくなる
実施することで生じるリスク
- 閉じ込められることによる強い不安・パニック・怒り
- トイレ、水分、ナースコールにすぐ行けない
- 転倒や急変があっても発見が遅れる
- 火災・地震のときの避難が遅れる
- 認知症症状の悪化、家族の罪悪感や後悔
先に検討する代替策
- 玄関のチャイム、人感センサー、見守りカメラ
- 散歩や外出の時間を日中に確保する、行きたい場所を聞く
- 動線の安全確保(段差、照明、手すり)
- ご近所・ケアマネ・地域包括への相談、見守りの協力
実施する場合の条件
- 施錠中も声が届く・安否が確認できる状態を保つこと
- 火災・救急時に開けられる合鍵の場所を家族・関係者で共有しておくこと
- トイレ・水分・食事の時間は必ず確保すること
家族にお願いしたいこと
施錠している時間帯、合鍵の場所、本人の様子(不安が強くなっていないか)を教えてください。
4. 4点柵(ベッドを柵で囲む)
該当する項目
11項目の3:自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
何を説明するか
ベッドから降りようとして転落するのを防ぐために、ベッドの4面を柵で囲むことを検討する場合があります。
※本人が自分で降りられる、または本人が希望して柵を使用する場合は、この説明の対象ではありません。
実施する目的(例)
- 夜間に一人で降りて転倒し、骨折・頭部打撲の危険がある
- 麻痺や認知症で、ベッドからの転落が繰り返されている
実施しない場合のリスク
- ベッドからの転落、骨折、頭部打撲、入院
- 夜間の一人歩きでの転倒
実施することで生じるリスク
- 柵を乗り越えての転落。高さのある所からの転落になり、かえって重症化することがある
- 柵とマットの間に体が挟まる、顔がはさまって息ができない
- 自分で降りられず、トイレを我慢しての失禁、皮膚トラブル
- 出られないことによる興奮・叫び・不眠、認知症症状の悪化
- 柵に手足をぶつける、すり傷・打撲
- ベッド上で動かないことによる筋力低下・拘縮
先に検討する代替策
- ベッドを低くする、床にマットやクッションを敷く
- 離床センサー、見守りカメラ、巡視頻度の見直し
- 手すり、トイレへの動線の確保
- 排泄のタイミング調整(就寝前の誘導)、睡眠リズムの調整
- 痛み・かゆみ・暑さ寒さの調整
実施する場合の条件
- 柵とマットの隙間をなくす、すき間への挟まりを毎回確認する
- 夜間の離床が落ち着いたら、柵を減らす(2本→1本→なし)
- 外す条件と見直し日を決めておく
家族にお願いしたいこと
夜中に起きてくる様子、柵につかまって立とうとしていないか、すき間に手足が入っていないかを教えてください。
5. 体幹抑制ベルト(ベッド上で体を固定)
該当する項目
11項目の2・9:転落しないように、または他人への迷惑行為を防ぐために、ベッド等に体幹や四肢をひも等で縛る。
何を説明するか
ベッド上で体を起こしたり、端に寄ったりすることを防ぐために、体幹をベルトで固定することを検討する場合があります。
実施する目的(例)
- ベッドから転落して頭を打つ危険が高い
- 点滴・ドレーン・胃ろうを抜いてしまう
実施しない場合のリスク
- ベッドからの転落、骨折、頭部打撲
- チューブの自己抜去、出血、再挿入のための入院
- 術後の安静が保てず、治癒が遅れる
実施することで生じるリスク
- 胸・腹部の圧迫による息苦しさ、呼吸が浅くなる
- 皮膚の圧迫、褥瘡、あざ、循環障害
- もがくことで締めつけが強くなり、けがをする
- 誤嚥したときの体位変換・対応が遅れる、窒息
- 排泄の失敗、おむつ内での放置による皮膚トラブル・感染
- 不安・怒り・屈辱、認知症症状の悪化
- 動けないことによる筋力低下・拘縮、急変時の対応の遅れ
先に検討する代替策
- ベッドの高さ、マット、クッションでのポジショニング
- 離床センサー、見守り、付き添いの工夫
- 疼痛・排泄・睡眠・かゆみの調整
- チューブの固定方法の見直し、医師・看護師との相談
- 安静度の再確認(本当に安静が必要か)
実施する場合の条件
- 呼吸状態と皮膚を短い間隔で観察し、記録する
- 食事・嚥下の時間帯は外すなど、時間を限定する
- 安静度が改善したら、すぐ外す。外す条件を決めておく
家族にお願いしたいこと
息苦しそうでないか、皮膚に赤みや跡が残っていないか、もがいて締まっていないかを教えてください。
6. つなぎ服(介護衣)
該当する項目
11項目の8:脱衣やオムツはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
何を説明するか
服を脱いでしまう、オムツを外してしまうことを防ぐために、後ろ開き・つなぎ型の衣類を着せることを検討する場合があります。
実施する目的(例)
- オムツを外して便を触る、壁や衣類を汚すことが繰り返される
- 脱衣して裸で過ごし、体を冷やしている
実施しない場合のリスク
- 便の接触による感染、皮膚の汚れ・かぶれ
- 裸での移動による転倒・低体温
- 家族の介護負担の増大、疲弊
実施することで生じるリスク
- 自分でトイレに行く・着替える機会が減り、排泄の自立が低下する
- 失禁しても気づかれず、放置される時間が長くなる
- 尿路感染、皮膚トラブル(蒸れ・かぶれ)
- 着替えを制限されることへの羞恥・自尊心の傷つき・怒り
- オムツを外す原因(蒸れ、かゆみ、不快、痛み)を放置することになる
- 暑さ・寒さの調節がしにくい
先に検討する代替策
- オムツの種類・サイズ・素材の見直し(蒸れにくいもの)
- 排泄のタイミングを合わせた誘導、トイレへの誘導
- 肌着の素材、前開き・マジックテープ式の衣類
- かゆみ・痛み・発疹の原因を探す(乾燥、カンジダ、便の刺激)
- 便の回数を整える(食事・排便コントロール)
実施する場合の条件
- 排泄の失敗がないか、皮膚の状態を毎日確認する
- トイレに行きたいという意思表示には必ず応じる
- 排泄の失敗が減ったら、通常の衣類に戻す。戻す条件を決めておく
家族にお願いしたいこと
皮膚の赤み・かゆみ、トイレに行きたそうな様子、暑さ寒さで気づいたことを教えてください。
7. ミトン(手指の機能を制限する手袋)
該当する項目
11項目の5:点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
何を説明するか
チューブを抜いてしまう、皮膚をかきむしってしまうことを防ぐために、手にはめるミトン型の手袋を検討する場合があります。
実施する目的(例)
- 点滴・CV・胃ろう・バルーンを繰り返し抜いてしまう
- かゆみで皮膚を傷つけ、感染する危険がある
実施しない場合のリスク
- チューブの自己抜去、出血、再挿入のための入院
- 皮膚の損傷、かきむしりによる感染・瘢痕
- かゆみからの不眠、興奮
実施することで生じるリスク
- 手を使えないことによる筋力低下・拘縮、ADLの低下
- 蒸れ・かぶれ・湿疹、指の間の皮膚トラブル、感染
- かゆみや痛みの原因を放置することになる
- 外そうとしての興奮・不安、家族や職員への攻撃
- 誤嚥したときに、手で払いのけられない
- 手で確かめる・触れる感覚を奪われることによる混乱
先に検討する代替策
- チューブの固定位置・固定方法の見直し、隠す・届かない位置にする
- 皮膚の保湿、かゆみの原因(乾燥、発疹、黄疸、薬の影響)の治療
- 爪のケア、衣類の素材
- 手遊び・握れるもの(タオル、ぬいぐるみ)で手の居場所をつくる
- 声かけ、注意をそらす関わり
実施する場合の条件
- 通気性のある素材を選び、短時間から始める
- 指先・手の皮膚を毎回確認する(かぶれ、赤み、腫れ)
- 見守れる時間帯だけにするなど、時間を限定する
- チューブ抜去の危険が下がったら、すぐ外す
家族にお願いしたいこと
手の赤み・かゆみ・腫れ、外そうとしていないか、夜眠れているかを教えてください。
8. 記入欄(7項目共通・コピーして使う)
| 項目 | 記入 |
|---|---|
| 利用者氏名 | |
| 説明した項目(番号) | 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 ・ 5 ・ 6 ・ 7 |
| 説明日時 | |
| 説明者(職名・氏名) | |
| 同席者 | |
| 家族(続柄・氏名) | |
| 本人への説明の有無・方法 | |
| 説明した内容(要点) | |
| 実施しない場合のリスクの説明 | した ・ していない |
| 実施する場合のリスクの説明 | した ・ していない |
| 先に検討した代替策 | |
| それでも実施する理由(3要件) | |
| 実施する期間・解除の条件 | |
| 観察する項目と頻度 | |
| 家族の意見(賛否ではなく、意見・希望) | |
| 家族から出た質問と回答 | |
| 次回見直し日 | |
| 委員会への報告日 |
記入のコツ
「家族が同意した」ではなく、「家族はこう言った」をそのまま書く。反対意見もそのまま残す。反対意見が残っている記録の方が、後から見て強い記録になる。
出典
- 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(11項目、3要件、在宅の扱い)
- 社内:これって身体拘束? 判断基準と記録の線引き(委員会 案)
- 社内:虐待防止(全事業所共通)