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認知症ケア実践【初級編】|介護職のための「超傾聴」
初級編のテーマは「本人と安心して関わる」です。 正しさを伝える前に、本人の言葉・表情・しぐさを受け取り、関係を壊さない基本を身につけます。
初級編のゴール
- 認知症ではなく、一人の人として向き合える
- 否定・訂正・説得を急がず、本人の気持ちを受け取れる
- 短く伝え、十分に待ち、本人が選べる関わりができる
- 急な変化を「認知症だから」で終わらせず、必要な相談につなげられる
1|最初に大切にすること
認知症があっても、その人の人生、感情、意思、得意なこと、大切にしてきたことは続いています。
- 診断名で見ない:「認知症の人」より先に、その人自身を知る
- できることを見る: すべてを代わりにせず、必要な部分だけ補う
- 本人に尋ねる: 家族や職員だけで話を決めない
- 尊厳を守る: 子ども扱い、試す質問、人前での訂正を避ける
ケアの目的は、職員の思いどおりに動いてもらうことではありません。本人が安心し、自分らしく暮らせることです。
2|「超傾聴」とは何か
超傾聴は、長く話を聞くことだけではありません。言葉にならないものも含め、本人が何を伝えようとしているかを受け取ろうとする姿勢です。
超傾聴の5つの基本
- 止まる: すぐに答えず、自分の焦りに気づく
- 見る: 表情、姿勢、周囲の状況を見る
- 聴く: 言葉を遮らず、沈黙も待つ
- 受け取る: 正誤より、本人の不安や願いを大切にする
- 確かめる: 分かったつもりにならず、本人の反応を見る
3|関わる前・話すとき・聴くとき
関わる前
- 正面から視野に入り、目の高さを合わせる
- 名乗り、本人の名前を呼ぶ
- 急に後ろから声をかけたり、身体に触れたりしない
- テレビや周囲の音を減らす
- 自分が急いでいないか、苛立っていないかを確認する
話すとき
- 一文を短くし、一度に一つ伝える
- ゆっくり、聞き取りやすい声量で話す
- 答える時間を十分に待つ
- 「これとこれ、どちらにしますか」のように選びやすくする
- 敬意ある言葉を使い、子ども扱いしない
聴くとき
- 言葉を先回りして補いすぎない
- 「なぜ?」で追い詰めず、「何が気になりますか」と尋ねる
- 事実を訂正する前に、気持ちを受け取る
- 言葉だけでなく、表情や身体の反応も見る
正しい説明が、いつも安心につながるとは限りません。 本人にとっての現実を聴き、安心して話せる関係を先につくります。
4|よくある場面での基本対応
同じことを何度も聞かれる
避けたい対応
- 「さっきも言いました」と回数を指摘する
- 覚えているか試す
基本の対応
- 本人には初めての質問かもしれないと考え、短く答える
- 予定を大きく書くなど、分かりやすい手がかりを用意する
- 質問の背景に不安がないかを考える
「家に帰る」と言われる
避けたい対応
- 「ここが家です」と言い争う
- 理由を聞かずに引き止める
基本の対応
- 「帰りたいのですね」と、まず言葉を受け取る
- 「家では何が気になりますか」と尋ねる
- 寂しさ、役割、家族への心配、疲れなどを考える
「財布を盗られた」と言われる
避けたい対応
- 「誰も盗っていません」と頭ごなしに否定する
- 本人のもの忘れを責める
基本の対応
- 「財布が見つからなくて心配なのですね」と返す
- 本人と一緒に探す
- 置き場所を決め、見つけやすい環境をつくる
介助を「嫌だ」と断られる
避けたい対応
- 必要性を繰り返し説明して押し切る
- 職員を増やして囲む
基本の対応
- いったん止まり、本人から離れる
- 痛み、寒さ、恥ずかしさ、怖さがないかを確かめる
- 「今にしますか、後にしますか」と選択肢を示す
5|行動には理由がある
同じ質問、歩き回る、拒否する、大声を出すなどの行動を、すぐに「問題行動」と決めつけません。
まず、次の基本項目を確認します。
- 身体: 痛み、空腹、便秘、尿意、脱水、眠気、発熱
- 気持ち: 不安、寂しさ、怖さ、退屈、恥ずかしさ
- 環境: 音、光、温度、人の多さ、分かりにくい表示
- 関わり: 急かしていないか、一度に複数の指示をしていないか
初級編では、原因を一つに決める必要はありません。「この行動には、本人なりの理由があるかもしれない」と立ち止まることが第一歩です。
6|急な変化を見逃さない
「認知症が進んだ」「いつものこと」と決めつけないでください。 急な混乱や行動の変化には、感染、脱水、便秘、痛み、薬の影響、せん妄などが関係している場合があります。
速やかに看護・医療へ相談する変化
- 急に反応が鈍くなった、または落ち着かなくなった
- 発熱、食欲低下、嘔吐、強い痛みがある
- 急に歩けない、転倒が増えた
- 顔のゆがみ、片側のまひ、ろれつが回らない
- 意識の状態がいつもと違う
介護職の大切な役割は診断することではなく、いつから、どのような変化が起きたかを具体的に伝えることです。
7|初級編の振り返り
- 認知症というラベルより、本人自身を見たか
- 否定や訂正を急がず、まず話を聴いたか
- 一度に一つ、短く伝えたか
- 本人が答える時間を待ったか
- 断る、選ぶ、後にする余地を残したか
- 行動の背景に、身体・気持ち・環境・関わりを考えたか
- 急な変化を、必要な専門職へつないだか
初級編から中級編へ
初級編では、本人との関係を壊さず、安心して関わる基本を学びました。
初級編:本人の声を聴く
中級編:聴いた情報を読み解き、チームでケアを変える